生活習慣病

糖尿病

食事で接種した栄養は糖（ブドウ糖）に変換され、血液によって全身に運ばれて、細胞が活動するためのエネルギーになります。そうした重要な役割を担っている糖ですが、血液中のブドウ糖の濃度（血糖値）が慢性的に高くなると、様々な血管の障害を引き起こしてしまいます。

健康な状態での血糖値は、空腹時に70～100mg／dl、また食事後の血糖値が上がった状態での上限は、140mg／dlくらいとされています。これらの数値よりも血糖値が高い状態を高血糖と判断し、高血糖の状態が慢性的に続くと、糖尿病と診断されます。

インスリンというホルモンは膵臓から分泌され、血液中のブドウ糖をエネルギーに変換したり、脂肪として蓄えたりする際に重要な役割を果たしますが、糖尿病は、このインスリンの分泌障害や効果の減弱などによって発症します。糖尿病は、主に1型と2型に分類されます。

1型糖尿病は遺伝的要因などによる自己免疫疾患で、インスリンを産出する膵臓のランゲルハンス島β細胞が破壊され、分泌が障害されることで発症します。

また2型糖尿病（生活習慣病と言われるのはこの型です）は、運動不足や過食、飲酒、喫煙などの生活習慣が影響し、インスリンの働きが悪くなって（これをインスリン抵抗性と言います）、発症するとみられているもので、すべての糖尿病に罹っている方の約95％が、この2型糖尿病とされています。

糖尿病自体に自覚症状はほとんどありません。しかし、高血糖状態のまま放置していると、血液中に余ったブドウ糖がやはり血液中にあるタンパク質と結合して、AGEという強い毒性を持った物質になります。このAGEが血管の細胞にダメージを与え、血管を「老化」させます。すると血管の弾力が失われて動脈硬化などを引き起こします。さらに血栓もできやすくなってしまいます。

こうした血管の障害は、全身の大小の血管で発生します。大きな血管の障害は、脳梗塞や狭心症、心筋梗塞、抹消動脈疾患、足病変などを引き起こしますが、特に糖尿病では微罪な血管に障害が起こることが多く、その場合、糖尿病の三大合併症と言われる「糖尿病網膜症」「糖尿病腎症」「糖尿病神経障害」などが引き起こされます。

糖尿病の療養で重要なのは、「生活習慣の改善」であり、適切な食事、運動療法が必要です。
食事療法としては、バランスの良い食事を適量、規則正しくとることが大切です。夜遅くの食事は避けるようにし、過度の飲酒や喫煙をしないようにすることなども重要です。
また、メタボリックシンドロームなど、内臓脂肪型の肥満があると、インスリン抵抗性により血糖値が下がりにくくなります。日ごろから体重を適正に保ち、ウォーキングや体操、軽い筋肉トレーニングなどの運動習慣を付けることが重要です。

また、これらの生活習慣の改善と並行して、必要に応じて内服薬や、場合によってはインスリン注射などの注射製剤による薬物療法を行うことになります。糖尿病合併症の発症や進行を抑えるために、なるべく早期の段階で治療を開始することが重要です。健診等で高血糖を指摘されましたら、早めのご受診をお勧めします。

脂質異常症

血液中の脂質（コレステロールや中性脂肪など）の濃度が基準値を逸脱すると、「脂質異常症」と診断されます。
診断の基準値は以下のようになっています。

コレステロールとは、細胞膜やホルモンとなる重要な栄養素で、主にLDLコレステロールとHDLコレステロールがあります。前者は体の隅々までコレステロールを運ぶ働きを、後者は体に余ったコレステロールを回収する働きをしています。一般にLDLコレステロールは悪玉コレステロール、HDLコレステロールは善玉コレステロールと呼ばれています。LDLコレステロールが上昇し、HDLコレステロールが低下すると、過剰になったLDLコレステロールが血管の内側にこびりついて堆積し、血管の狭窄、そして血管自体も硬くなり、いわゆる「動脈硬化」が促進されます。この結果、血管内で「血栓」ができやすくなり、血流に乘った血栓が心臓や脳の血管に到達して血管を詰まらせると、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、などを引き起こすことになります。また、同様に中性脂肪も動脈硬化を促進する危険因子です。

脂質異常症の改善には、食事療法が中心となります。コレステロールが多く含まれる肉や卵、乳製品といった動物性脂肪や乳脂肪などの摂取に注意し、野菜やキノコ、海藻類など、食物繊維を多く含み、中性脂肪を減らす働きがあるとされるものを積極的に摂るようにします。また、納豆や豆腐などの大豆製品が、脂質を下げ、動脈硬化を抑制する効果が期待できます。

この他、炭水化物や糖質も摂り過ぎに注意が必要で、中性脂肪を上昇させる原因になります。主食は食べ過ぎず、腹八分目に抑え、甘いお菓子などにも注意しましょう。また青魚などに含まれるEPAやDHAなどの不飽和脂肪酸は、いわゆる血液がサラサラになるという効果がありますので、積極的に摂るようにしましょう。これはEPAやDHAが血液中に多く含まれる赤血球を変形しやすくし、血液が流れやすくなるためです。

動脈硬化により、心疾患や脳疾患の合併のリスクがある場合は、少しでも早く脂質異常を改善するため、LDLコレステロールや中性脂肪を低下させる薬物療法を行います。

高尿酸血症

足の親指の付け根などの関節に、非常な激痛を引き起こす「痛風」という病気があります。「風が当たるだけで痛い」ということからこの名があるとされていますが、この「痛風」のもととなるのが、高尿酸血症です。

尿酸というのは、「プリン体」を分解したときにできる老廃物で、通常は腎臓から排出されるものです。プリン体は細胞の新陳代謝を行ったりし、さらに体を動かすエネルギーとしても重要な存在で、ほとんどの生物に存在するため、あらゆる食物に含まれています。またヒトの体内でも多く産出されているものです。

このプリン体の摂取が多くなると、体内での尿酸の産出量が増えていきます。一方、1日に排出できる尿酸の量はほぼ決まっていますので、そのバランスが崩れると、血液中の尿酸の濃度（尿酸値）が上昇していきます。この尿酸値が、7.0mg/dlよりも高い状態になると、高尿酸血症と診断されます。

高尿酸血症が続くと、水に溶けにくい尿酸は次第に針状に結晶化していきます。それが足の親指の付け根などの関節などに蓄積すると、その結晶を体が異物ととらえ、炎症反応が起こり、「痛風」が引き起こされるのです。また、尿酸は尿で体外に排泄されますが、体内の尿酸が過剰であるため尿中の尿酸も過剰となり、それが結晶化することで「尿路結石」となりますが、これも激痛を伴います。また、このような状態が長期間持続すると、腎機能障害も引き起こされます（痛風腎）。

高尿酸血症は圧倒的に男性に多い病気で、男女比では9:1となっています。これは女性ホルモンに腎臓から尿酸の排泄を促進する働きがあるためで、女性ホルモンの分泌が減少していく50歳以上では、男女差が縮まる傾向にあります。

高尿酸血症の改善の基本となるのは、やはり食事療法です。プリン体が多く含まれる、ビールや鶏卵、魚卵、肉（特にレバー）、魚（煮干し、鰹節なども）等は、摂り過ぎないよう注意が必要です。プリン体ゼロをうたっているアルコール飲料もありますが、アルコール自体に尿酸の排泄を阻害する働きがあるため、なるべく量を控えるのが良いでしょう。また無酸素運動をすると尿酸が溜まりますので、運動は軽いウォーキングなどの有酸素運動を心がけましょう。

痛風を発症してしまった場合などは、尿酸降下薬などの薬物療法を行う場合もあります。痛風の発作（炎症、痛み）に対しては、非ステロイド性抗炎症薬が使用されます。